相続放棄した場合、不動産はどうなるの？借金はどうなるの？

■相続放棄ってどんな手続き？

相続放棄とは、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出することで、はじめから「相続人ではなかったこと」にする手続きです。では、これによってどのような効果が発生するのでしょうか。

■相続放棄によって発生する２つの効果

その１：一切の債権債務を相続しないことになる。

相続放棄をすると相続人ではなかったことになるので、一切の財産（プラスの財産もマイナスの財産も）を相続することはできなくなります。利用するケースとしては、主に「借金」の相続を避けるためです。

例えば被相続人が多額の借金を背負った状態で死亡した場合、相続放棄をすることで、相続人が借金を相続する事態を回避することができます。その際、被相続人にプラスの財産が有ってもプラスの財産だけを相続することはできません。

その２：他の相続人や親族に影響が出る。

法定相続人の一人が相続放棄をすると、その他の相続人の相続分は必然的に増えることになります。また、相続人には相続順位（子が第1順位、尊属が第2順位、兄弟姉妹が第3順、なお配偶者は常に相続資格あり）が定められていますが、同順位の相続人がいなくなった場合は、次順位の親族に相続権が発生することになります。
例えば、配偶者のいない被相続人で子供達全員が相続放棄した場合は、次順位である直系尊属（ご両親）が相続人となります。
そのため、借金を相続放棄する場合は、次順位の親族のことも考えて決断する必要があります。実際には、次の順位に相続人に、先順位の相続人が全員相続放棄を放棄したことを知らせて、早く（正確には3か月以内に）相続放棄の手続きをするよう促すことになります。

■相続放棄された財産はどうなるの？

さて、ここからが本題です。
相続人全員が相続放棄をした場合は、残された相続財産はどうなるのでしょうか？

プラスの財産があるかないかの2つに分けて考える必要があります。

《プラスの財産が全くない場合》
借金しかない場合です。そもそも相続放棄をするというケースはこのタイプです。
借金は、請求する相手がいなくなりますので、事実上消滅することになります。

《プラスの財産がある場合》
まずは、プラスの財産とマイナスの財産が残ります。マイナスの財産の持ち主、すなわち債権者からすれば、プラスの財産を換価して債権の回収をしたいところです。

実務的には次のような流れとなります。

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１：利害関係人（債権者など）が家庭裁判所に対して相続財産管理人を専任するよう申し立てる。

亡くなった人に対して債権を有している人は、少しでも債権回収をするために、残った財産から弁済を受けようとします。この弁済などを行うために財産を管理したり、債務調査を行ったりする人を「相続財産管理人」と言います。通常は弁護士が選任されます。なお、プラスの財産があまりにも少ない場合には、予納金が必要になることもあります（５０～１００万円程度）。そのため、最低限予納金が回収できる見込みがなければ、債権者が申立てるメリットはないでしょう。

２：一定の期間を待つ。

相続財産管理人の選任が家庭裁判所から公告されたら、その後「２ヶ月間」相続人が現れないか待ちます。現れなかった場合は、次に再度２ヶ月以上の期間を定めて債権者や受遺者などに対して請求するよう公告します。

３：債権者へ弁済

被相続人の残した財産を売却して現金化し、各債権者に対して弁済します。通常、相続放棄されるようなケースでは、すべての借金の弁済に足りない場合が多く、その場合はそれで終了となります。

また、万が一債権者への弁済ののちに財産が残るようなことがあれば、さらにそこから６ヶ月以上の期間を定めて再度相続人や受遺者がいないか確認をし、誰も現れなければ「特別縁故者」がその財産を受け取ることを請求することができるようになります。（期間満了後３ヶ月以内）

特別縁故者とは・・・

◦被相続人と生計を同じくしていた者
◦被相続人の療養看護に努めた者
◦その他被相続人と特別の縁故があった者

例えば、内縁の妻などがこれにあたります。

そして特別縁故者も現れない場合は、最終的に「国庫に帰属」することとなります。