死亡し1年を経過した頃、被相続人の債権者からの督促状が届いたため相続放棄した事案
被相続人ː配偶者
相続人ːAさん(被相続人の配偶者)
死亡日ː平成28年2月6日
死亡を知った日:平成28年2月9日
相続開始を知った日(熟慮期間起算日)ː平成29年4月25日
相続放棄申立日ː平成29年6月5日
Aさんの夫である被相続人は平成28年2月6日に死亡し、3日後の2月9日に死亡の連絡を受けました。
Aさんは平成21年5月頃に離婚を前提に被相続人とは別居し、息子の家に転居し、その後は被相続人と連絡を取っていませんでした。
そのためAさんは、被相続人の財産や借金は把握しておらず、また、被相続人はAさんと別居する2年前から生活保護を受給していたため、被相続人には財産も借金もないと信じていましたので、特に相続の手続きはしませんでした。
ところが平成29年4月25日、債権者から「相続に関するお伺い」の書面が届き被相続人に借金があることを知り、Aさんは、死亡から時間が経ってしまっているがどうすればよいのかと相談に来られました。
Aさんは、被相続人が死亡した約1年後である平成29年4月25日債権者からの書面が届いた時点で初めて債務の存在を知ったことになります。
すでに死亡の通知を受けてから3か月以上経過していましたが、最高裁判決を適用して、3か月の起算点は督促状を受領した時点である旨の上申書を添付して相続放棄を申し立て、申立は無事に受理されました。
死亡を知った日から3か月以上経過していましたが相続放棄ができた事案です。
相続放棄は自分のために相続が開始したことを知ってから(通常は死亡を知ってから)3か月以内に家庭裁判所に申立なければなりません。
期間経過後に、多額の負債が発覚したため相続放棄する場合は、相続開始時点では相続財産が全くないと信じ、そのように信じたことに相当な理由がある場合に限られます。
このケースでAさんは8年近く別居しており、被相続人の財産や借金について把握できない状況でした(➡長期間の別居がキーポイントです)。
また被相続人はAさんと別居する2年前から生活保護を受給していました(➡生活保護者という点もキーポイントです)。
こうした事から、Aさんが、被相続人には財産や借金がないと信じたわけで、またそのように信じたことに相当な事情があると言えます。
そのため事情を詳しく説明する書面(上申書)を作成し相続放棄申述を申し立て、無事に受理されました。
3か月経過した場合でも、経過型の相続放棄を多数経験している弁護士にまずはご相談されることをお勧めします。