死亡後5か月を経過して被相続人(父親)の債務を請求されたが、被相続人とは30年近く交流がなかった事情を説明して相続放棄が受理された事例
被相続人(父親)の子
被相続人は令和2年6月22日に死亡し、数日後にAさんは、被相続人の居住していた甲市役所から死亡の連絡を受けました。
Aさんは被相続人と30年近く交流がなかったので、被相続人の財産や借金を把握しておらず、連絡をくれた甲市役所からも財産や負債について知らされていませんでしたので、特に相続の手続きをしませんでした。
ところが令和2年11月25日に、Aさんあてに消費者金融から「ご通知」の書面が届き、被相続人に約110万円の借金があることを知り、Aさんは驚いて「被相続人の死亡から5ヶ月の時間が経ってしまっているがどうすればよいか」と相談に来られました。
Aさんは、被相続人が死亡した約5ヶ月後の令和2年11月25日に消費者金融からの書面が届いた時点で初めて債務の存在を知ったことになります。
この時すでに死亡の通知を受けてから3か月以上経過していましたが、最高裁判決を適用して、3か月の起算点は、死亡を知った日ではなく「ご通知」を受領した時点である旨の上申書を添付して相続放棄を申し立て、申立は無事に受理されました。
死亡を知った日から3か月経過していましたが相続放棄ができた事案です。
相続放棄は自分のために相続が開始したことを知ってから(通常は死亡を知ってから)3か月以内に家庭裁判所に申立なければなりません。
期間経過後に負債が発覚したため相続放棄する場合、最高裁昭和59年4月27日判決によると、「相続開始時点では相続財産が全くないと信じ、そのように信じたことに相当な理由がある場合」に限られます。
Aさんは、被相続人と30年近く交流がなかったのですから、被相続人の借金や財産について把握することができない状況にあり、被相続人には借金がないと信じたことに相当の理由があるといえます。