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相続を放棄した後、相続財産(特に不動産)はどうなるの?

相続放棄と相続財産の関係で分類すると3つのタイプに分かれます。

  • 相続財産が全くなく、負債のみがある場合
  • 相続財産があるが負債の方が多い場合
  • 負債はないが、価値のない財産(主に不動産)がある場合

 

相続財産が全くなく、負債のみがある場合

年金暮らしの被相続人が消費者金融からの借金300万円を残して死亡したケース

典型的な相続放棄のタイプです。このようなケースでは、相続放棄以外の方法はありませんので、迷うことなく期限内に家庭裁判所に放棄の手続きをします。
いわゆる3か月を経過したケースでは、特別な配慮が必要ですので、そこだけ要注意です。

財産がありませんので、放棄後に財産をどう管理するかという厄介な問題も起こりません。

 

相続財産があるが負債の方が多い場合

1,000万円の価値のある不動産があるが、それ以上に負債を3,000万円残して死亡したケース

このようなケースでは、このまま相続してしまうと、差し引き2,000万円の負債を抱えてしまいます。
不動産だけ相続して、負債は放棄するということはできませんので、やはり相続放棄の手続きをすることが肝要です。
絶対数は多くありませんが、当事務所でも数パーセントはこのような相続放棄を処理しております。

気になるのは、放棄した後、不動産の処理はどうなるのかということでしょう。

このケースでは、債権者側で家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらい、その管理人が不動産を売却処分して、債権者に分配して相続財産を清算します。
不動産に抵当権がついている場合は、抵当権者が不動産の競売手続きを取り、不動産を競売処分します。
(細かい話になりますが、この場合、相続財産管理人ではなく、特別代理人が選任されることもあります。)
すから相続放棄をした相続人は、放棄後、基本的には何もする必要はありません。

 

負債はないが、価値のない財産(主に不動産)が唯一ある場合

市場性がないため買い手がつく可能性がない田舎の郊外にある家屋を残して死亡したケース

これが数ある相続放棄の論点の中で、最も解決困難なケースといっても過言ではありません。
いわゆる「空き家問題」の原因の一つにもなっているのがこれです!
価値のない不動産は相続しても意味ないから、放棄してしまえば後はそんなの関係ない!と思われるでしょうが、法の建前は違います。

たとえ放棄しても、一定の管理義務は継続するのです!

詳しくは、

相続放棄後の財産管理義務 ☞ クリック

で解説しておりますので、ご参照ください。

ここでは問題の所在を整理するため、管理義務は継続するという法の建前のもと、価値のない不動産がある場合の現実の選択を考えていきます。

 

負債がある場合

勝ちのない不動産の他に、1,000万円の負債を残して死亡したケース。

この場合は、1,000万円の負債をみすみす相続することはあり得ませんので、価値のない不動産云々ではなく、とにかく放棄して後で不動産管理の問題(後記③を参照)を考えることになるでしょう。

 

他に負債もあり、価値のある財産(不動産、預金等)もあるが負債の方が多い場合

1,000万円の価値のある不動産があるが、それ以上に負債を3,000万円残して死亡したケース。

この場合は、2,000万円の負債を相続することはあり得ませんので、迷うことなく相続放棄をします。
先にも解説した通り、このケースでは、債権者が家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらい、その管理人が不動産売却処分をはじめとする相続財産の清算処理をしていきます。
この処理項目の1つに価値のない不動産の処理が含まれますので、すべて相続財産管理人の責任において処理することになります。
先の相続放棄後の財産管理義務で解説したとおり、相続財産管理人が選任されることで、相続放棄者の管理義務はなくなります。

 

負債はなく、価値のない不動産以外にも財産がない場合
(価値のない不動産しかない)

これが本項のテーマです。
すでに、相続放棄後の財産管理義務でも解説しましたが、この場合、相続放棄をしたとしても不動産の管理義務は、次の管理者(現実には相続財産管理人)が現れるまで継続します。

ただ相続財産管理人を選任するにしても数十万円単位の費用がかかります。
②のケースでは、ほぼ間違いなく債権者が相続財産管理人選任の申立てをしますので、相続放棄者は何もしなくてよいのですが、本ケースでは放棄者が費用をかけて申立てするしかありません!!
では、放棄してもこんな面倒なことが続くのであれば、いっそのこと相続して買い手が見つかるのを待つか、という選択も危険です。
というのは絶対に負債はないという確信があれば別ですが、将来もし負債が発見されるとその負債を支払わなければならない危険があるからです。

ですから

(a)放棄して相続財産管理人専任の費用負担を覚悟することと

(b)相続して債務負担の危険及び買い手が現れるまでの不動産の管理責任の負担を覚悟すること

どちらのマイナスをとるか!の選択の問題になるといえます。

この問題に直面した方が、現実にどのような選択をしているかについての確固たる統計があるわけではありませんが、これまでの実務経験からすると、圧倒的に(a)の放棄を選択しているようです。

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