別れた主人との子供の相続債務について、子供には相続財産が全く無かったので、特段手続きをしないでいたところ、死亡後1年以上経過して請求されて初めて債務の存在を知って、相続放棄をしたところ認められた事案。
平成24年3月16日に、被相続人Bさんが亡くなりました。Bさんには、平成12年に結婚した配偶者Cさんがいましたが、子供はおりませんでした。Bさんの母親であるAさんは、Bさんの父親であるDさんと平成10年に離婚しましたが、その数年前からBさんとも同居していませんでした。Aさんは葬儀に参列しましたが、以前破産したことがあるBさんには特段の財産はありませんでしたので、Aさんは相続について何の手続きも取りませんでした。そうしたところ、平成25年7月24日にBさんの配偶者Cさんから連絡が来て、被相続人Bさんには,少なくとも400万円程の借金が存在するということが判明しました。Bさんが亡くなってから1年以上も経っているので、相続放棄できるのか心配になって相談に来られました。
担当弁護士は、被相続人Bさんの生活歴や相続人Aさんと被相続人Bさんとの交際状況その他諸般の状況からみてAさんに対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があると判断しました。そこで熟慮期間は、Bさんの配偶者Cさんから「Bさんに400万円程度の借金が存在する」ことの連絡を受けた平成25年7月24日から起算されるとの見解のもとに、平成25年9月10日相続放棄の申立をして無事受理されました。
本件は、3ヶ月が経過しても相続放棄できる典型例です。Bさんには子供がいませんでしたので、配偶者のCさんとBさんの両親Aさん、Dさんが相続人になります。Aさんは、Bさん死亡当時に自分が相続人の一人であることは知っていましたから、熟慮期間の3ヶ月は、死亡後3ヶ月経った平成24年6月16日頃に経過してしまいましたので、相続放棄はできないことになります。しかし、AさんはBさんとは20年近く別居しており、互いに別の家庭を持ち行き来もしていなかったので、相続人Aさんに対しBさんの相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があると考えられます。そうすると最高裁判所のいう熟慮期間の3ヶ月は、「相続財産の存在を認識したときから起算する」ことになります。本件では、Aさんが「相続財産の存在を認識した日」とは、Cさんから「Bさんに400万円程度の借金が存在する」ことの連絡を受けた平成25年7月24日と判断出来ます。
そこで弁護士は、Aさんが、相続財産の存在を認識するに至った事情を詳しく説明した事情説明書(上申書)を作成して本件相続放棄申述を申し立て、受理されました。
尚、本件ではBさんの父親であるDさんも相続人になりますが、Dさんの相続放棄は、Aさんと離婚していることもあって、当事務所とは別の法律事務所で相続放棄の手続きをしたと聞いております。